羽曳野市にある保育園で、園庭の水はけが悪く、大雨の度に園庭の一部が水浸しになってしまう、
というご相談を受けて、7月に園庭の樹木の剪定作業と、園庭の水はけ改善の作業を
行わせていただきました。

一見、緑に包まれ開放的で心地の良い園庭なのですが、元々この地に根付いていた
柳の大木やセンダンの木を除いて、あとから植栽された木々は全体的に表情が悪く、
葉色が悪く生育の悪いもの、枯れ枝の目立つもの、害虫の被害に遭うものが多い印象です。

僕は植木屋という職業柄、屋外の活動が多く、自然のものと対峙する機会の多い中、
日々の観察や体感のなかでここ数年で自然環境の変化がすごいスピードで激甚化しつつあると感じています。
台風の巨大化、局地的集中豪雨、もはや「古き良きにっぽんの夏」とは呼べないほどの高温化する酷暑。
これからは、人々の暮らしをいかに安全に、快適に、なおかつ環境を育みながら、
自然環境と共存していく、そのような住環境の機能を「庭」や「園」といった場所に持たすことが
重要ではないか、と考えています。
すこし話が逸れましたが、まず、園庭の樹木の剪定作業をクレーン車やハシゴなどを使って行います。
大きくなった柳の木は、強風で折れる恐れのある輪郭から飛び出した徒長枝と枯れ枝、建物の庇にかかる
支障枝などを中心に、その他の傷んでいる樹木は落下の危険性のある枯れ枝を中心に剪定しました。


剪定で出た枝葉はゴミとして処分せず、太いものは玉切りして園の保護者さんたちに
薪として引き取ってもらい、その他は粉砕機を使ってウッドチップとして環境資材として、
または水はけ改善のための暗渠に用いる粗朶として、すべて園庭で環境改善資材として再利用することに。

問題を起こしている園庭と隣地の竹林との境界部分。
園庭の造成や客土など様々な要因で水の逃げ場がなくなり、常に滞水している状態で、雨の続く時期には
湿地化し、大雨が降ると、地中に浸透しきれなくなった水がオーバーフローして園庭を水浸しにする原因を作っています。






今回の施工で、まんべんなく滞水していた部分に横溝と竪穴をあけ、
地形落差を作り、土中の空気と水を動かすことによって、
空気の通りやすい場所を多く作り、そちらへと周辺の木々の根の張りやすい環境を育てて誘導。
木々を健全に育てながら根っこの力を利用し、土中に集まってくる水の吸い上げ、
浸透、分散、の水みちを作る効果を期待しています。
このように、土壌を育て、木を育ててゆく手法を用いながら、継続してこの場所の改善作業を
続けていきたいと思っています。
園庭の木々をより健康に、地中の根っこのネットワークを繋げていき、自然と水はけがよくなると、
人にとっても居心地よい呼吸する園庭になると思います。

最後に、この保育園でもひと際目を引く、園庭の3本のマルバヤナギの大木。
この木は元々この土地に生えていたもので、このヤナギの木を一目で気にいって
この場所で保育園をはじめることにした、と園長先生が僕に教えてくださいました。
現場で作業していた日は、いずれも日なたでは35℃を超えるような猛暑日でしたが、
不思議とこの柳の木の下や周辺だけは、すーっと汗のひくような心地の良い涼しい風が吹いていました。
柳やセンダンの木などは河川敷のような水の集まってくる場所を好む植物です。
この木たちが地中深くまで根を張り、冷たい地下水を吸い上げ、蒸散してくれているお陰で、
この園庭で走りまわる子どもたちを直射日光から守り、心地よく遊んでいられる。
また、根っこからたくさんの水を吸い上げてくれているお陰で、園舎の建物も湿気から守り、
ひんやりとした空気を運んでくれる。
エアコンが普及し、化石燃料や電気、現代のテクノロジーによって、便利で快適を手に入れてしまった
現代の暮らしのなかで、忘れ去られた本来の人間らしいシンプルな暮らしのあり方、自然と共に生きてきた
日本人の歩みを今一度、強く意識して考えさせられる経験をさせてもらったな、と感じています。
naoya takahashi