ナーセリーの庭

2年前の春にこの果樹と植木の畑に家を建て住まいを移してから、

僕たち夫妻の友人一家や、共通の友人、ご近所さんなどいろいろな人たちが

この場所に遊びに来てくれるようになりました。

久しぶりの友人たちとはお互いの近況報告をしたり、子供の成長ぶりに目を細めつつ、

僕はこの庭で子どもたちが、日頃のうっぷんを晴らすかのように元気に走り回っている姿を

眺めている時間がとても好きです。

我が家の敷地から徒歩1分ほどの場所に千早川があるのですが、先日は初めてこの川で

子ども達と生き物観察をしたり、テンカラ釣りを少し教えてみました。

お世辞にも渓流や清流と呼べるような美しい川ではないのですが、

春には昔ほどではないにしろゲンジボタルも飛びますし、

今回子どもたちと観察しただけでも、ヨシノボリやエビ類、モクズガニ、沢蟹、

ハヤなど様々な生き物がいて、親たちも童心にかえって一緒になって川遊びを楽しみました。

僕にとってはここが生まれ育った地元なので、今の子どもたちと同じくらいの年齢の時は、

よく近所の友だちと集まってはここで川遊びをしたり、クワガタムシやセミを捕まえに

野山を駆け回ったのが夏の淡い思い出として記憶に残っています。

ですが、もうその頃からはだいぶ年月が経ち、すっかり自分の住む集落も過疎化と高齢化が進み、

子供たちが元気に走り回る姿はあまり見ることができなくなってしまいました。

あの頃と比べて、夏が暑くなりすぎたり、子供がほどほどに安全に遊べるくらいの

ほどほどに人の手の入った「里山」といわれる環境が少なくなってしまったのもあるかもしれません…。

ですが、普段、誰も見向きもしない、ごくごく近所の川や自然にも

まだまだたくさんの生き物が棲んでいて多様性があり、あらためて自分たちの暮らすフィールドは

豊かさのポテンシャルを大きく秘めた場所なんだ、とも再確認しました。

僕にとってはこの流域に暮らす一員として、川や近くの畑や田んぼ、竹藪、森などの

フィールドすべてが草庭の大切な要素の一部なのかもしれないな、と感じました。

涼しい季節になったら、より多様性のある美しい場所を目指して、このフィールドの

環境改善にも着手しようかと思っています。

「子どもたちが居て、初めて庭の風景が完成する」

そんなさりげない暮らしの庭を造りたいな、と、今までもぼんやりと考えてはいましたが、

人が人らしく、健やかに育っていくためには、その周りの植物や生き物すべてがいきいきと輝いている、

そんな場所こそが人の心を動かす風景となり、真の心の安息をもたらすような場所になるのではないかな、

と今は考えています。

naoya takahashi